ロサンゼルス郊外の原子力発電所でニュース番組の取材中に地震があり、原子炉の制御システムにトラブルが発生する。コントロール・ルームのただ事ならぬ気配に事故を疑うキャスターのジェーン・フォンダとカメラマンのマイケル・ダグラス。
制御室長のジャック・レモンは設備の検査に不正があったことを発見。マスコミに情報を提供しようとしたところ、さまざまな妨害をくらい、車の運転中に命を狙われ、原発のコントロール・ルームに籠城。フォンダとマイケルを呼び寄せ、生中継で内部告発を試みる。
タイトルの「チャイナ・シンドローム」は、メルトダウンの危険性について原発関係者のあいだで使われていたブラック・ジョーク。
ジェーン・フォンダ主演なので、観る前は原発反対キャンペーンのプロパガンダ映画かと思っていたが、軽薄なマスコミ文化や消費型資本主義への皮肉も盛り込まれた、娯楽性の強いサスペンス・スリラーだった。反原発集会の幼稚な様子も正直に描かれている。
冒頭の、唄うメッセンジャー・サービスをレポートする様子がバカバカしくて面白い。
生放送の本番直前までスタッフがトイレから戻ってこないとか、テレビ放送に関するエピソードはよく取材されている。
事件現場からのレポートをCMでばっさり切ってしまう無情なラスト。
そのCMが電力を必要とする電子レンジなのもアイロニックな風刺が利いてる。
原発批判とマスコミ批判を巧みに取り入れ、利便性を求める消費者に公共のモラルを考えさせる。上手い脚本だと思う。
ジャック・レモンは「エアポート'77」に続いてコメディ要素のない役で、大仰に正義感を振り回すところもなく、仕事の誇りを失い孤立してゆく心情を繊細に演じている。
ジェーン・フォンダのTVキャスターも、安っぽい自己顕示と出世欲がそれっぽく、テレビ業界で生きている女性をリアルに演じている。実際テレビのキャスター・リポーターやってる女性は、こんなタイプが多い。巨大な亀をペットに飼っている独り暮らし。生活のリアリティを見せようと本筋と絡まない場面を入れているのは無駄に思う。
マイケル・ダグラスのカメラマンは(「ザ・ディープ」のニック・ノルティ同様に)誰が演じてもいい、どうでもいい役。自分のプロデュース作品だから役を膨らませ出番を多くしたのか、それともジェーンとレモンに華を持たせようと意図して目立たない役を演じたのか。
内容が内容だけに電力会社の協力は得られず、原子力発電所はスタジオ・セットとミニチュア合成を用いた特殊撮影。プロダクションデザインは「大統領の陰謀」のジョージ・ジェンキンス。
現在は、地球温暖化阻止派(化石燃料による発電の廃止とプラスチック製品の製造抑止を訴える)と原発反対派(放射能汚染の危険を訴える)の対立に、代替エネルギー推進派(太陽光発電とか風力発電とか)の利権争いが絡んで、エネルギー問題はますますグローバル化複雑化している。人間の幸福追求欲は無限大だから、人類が滅びてしまうまで解決しないと思うよ。
電力が供給されなくなったら映画だって見られない。
石油由来のフィルムによる撮影・上映に規制がかけられ、デジタル撮影・上映に助成金が出るなんて法律ができるかも知れない。
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