2021年03月|映画スクラップブック


2021年 03月(12本)

2021/03/01

シャーロック・ホームズの冒険

シャーロック・ホームズの冒険|soe006 映画スクラップブック
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THE PRIVATE LIFE OF SHERLOCK HOLMES
1970年(日本公開:1971年03月)
ビリー・ワイルダー ロバート・スティーヴンス コリン・ブレイクリー ジュヌヴィエーヴ・パージュ スタンリー・ホロウェイ クリストファー・リー タマラ・トゥマノヴァ クライヴ・レヴィル アイリーン・ハンドル

ビリー・ワイルダー&I・A・L・ダイアモンドによるホームズ・パスティーシュ。
序盤30分をたっぷり使って、ホームズ・ファンをにっこりさせる小ネタ(衣装やヴァイオリン、ワトソンとのホモ説など)を散りばめているのがワイルダーらしい。

シャーロック・ホームズの冒険

ずいぶん前からこの映画、初版は4時間近い長尺だったとの話があった(ワイルダーのインタビュー記事などで読んだ記憶がある)が、ほんとうだった。
編集者アーネスト・ウォルターがDVD映像特典で証言しているだけでなく、現存していたカット場面や音声、台本を編集した「未公開シーン集」が50分、特典に収められている。
しかし、ワトソンが迷探偵ぶりを見せるエピローグ・エピソードの「裸のハネムーンカップルにご用心」をみた感じでは、やっぱり2時間6分の公開版で良かったように思う。
銀行の貸し金庫から発見される未発表原稿のくだりは現行の尺で充分だし、「逆さま部屋の事件」も(面白くはあるが)本筋とは関係ない。
なにしろ、謎の美女(ジュヌヴィエーヴ・パージュ)が登場するまで30分近く費やしているのだから。そしてそこまでの(「白鳥の湖」のプリマドンナが絡むエピソード)が、ホームズ・ファンにはいちばん面白い。特にワトソン役コリン・ブレイクリーのはしゃぎようったら、まるでジャック・レモン!(「お熱いのがお好き」の再現だね)

貸し金庫に眠っていたワトソンの箱から出てくる遺品の数々。
そのタイトルバックの場面だけで、ニヤニヤがとまらない。

シャーロック・ホームズの冒険

小道具使いの名人ワイルダーがホームズものを撮るんだから、次々と繰り出される小道具のそこかしこに伏線や仕掛けが施してある(パッパッと開く日傘に泣かされる!)。

今回悔しかったのは、ネス湖の怪物の正体を(中学時代に月曜ロードショーで見ていたため)覚えていたこと。ちょうど海外推理小説にどっぷりハマって、コナン・ドイルのホームズものは全部読み終えていた時期で、もう最高に楽しんだ記憶が残っている。(無理は承知で)まっさらで再見したかったなあ。

霧のロンドンやスコットランドの古城が、綺麗に撮られていて素晴らしい。
音楽はミクロス・ローザ、演奏はロイヤル・フィルハーモニー。

マイクロフト役はクリストファー・リー。

シャーロック・ホームズの冒険:クリストファー・リー

これが意外にナイスなキャスティング。むかし見たときは彼が演じていることに気づいてなかったんじゃないのかな。これまたDVD特典のインタビューを見たら、ご自身はハマー・プロ専門のイメージで扱われていたことを、けっこうネガティヴに感じていた様子だった。
晩年も「スター・ウォーズ」や「ロード・オブ・ザ・リング」だものなあ。

傑作揃いのワイルダー作品のなかではあまり話題にされない地味な評価の映画だけど、これはこれで上出来だと思う。
欲を言えば、美女とホームズの恋愛模様をもう少し踏み込んで欲しかった。

70

2021/03/01

シャーロック・ホームズの素敵な挑戦

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THE SEVEN-PER-CENT SOLUTION
1976年(日本公開:1977年04月)
ハーバート・ロス ニコル・ウィリアムソン アラン・アーキン ヴァネッサ・レッドグレーヴ ローレンス・オリヴィエ ロバート・デュヴァル サマンサ・エッガー ジェレミー・ケンプ アンナ・クエイル ジョエル・グレイ レジーヌ チャールズ・グレイ ジョージア・ブラウン ジル・タウンゼント ジョン・バード アリソン・レガット

ニコラス・メイヤー原作・脚色によるホームズ・パスティーシュ。
原題は「7パーセントの溶液」。すなわち、ホームズ家の元家庭教師だったモリアーティ教授をなぜ恐れ憎み、コカイン中毒に陥ってしまったのか、ウィーンの精神分析医フロイト博士が催眠療法で解読。これにオペラ歌手ローラ・デヴロー誘拐事件が絡む。

ホームズをニコル・ウィリアムソン、ワトソンをロバート・デュヴァル、マイクロフトをチャールズ・グレイ。可もなく不可もなく、無難かつ面白みのないキャスティング。
序盤の説明をワトソンのナレーションでやってるくだりが、野暮ったい。デュヴァルの語りは当時の倫敦の感じが出せていない。アラン・アーキンは近年のクソジジイぶりからは想像しがたい真っ当な役作りで、フロイト博士を正直かつ地味に演じている。

シャーロック・ホームズの素敵な挑戦:アラン・アーキン

ワトソン夫人役でサマンサ・エッガーが出ていたのが、ちょっとだけ嬉しい。

宿敵モリアーティをローレンス・オリヴィエが演じているというので楽しみにしていたが、出番も少なく、大御所を(宣伝以外で)起用する理由も希薄。

シャーロック・ホームズの素敵な挑戦:ローレンス・オリヴィエ

薬抜き治療の禁断症状のなか、ホームズが襲われる幻覚に「まだらの紐」や「パスカヴィル家の犬」など過去の事件が再現されるのも想定内。ヒッチコック「白い恐怖」、ワイルダー「失われた週末」はもっと奇天烈なイメージで面白かったし、精神分析とか幻覚場面に鈍感になってしまった。
ホームズ幼少期のトラウマ解読も、フロイト絡みならそういうことだろうな、という予想どおりのオチ。子どもが階段を昇るインサートショットがあったから、先は読めていた。

誘拐事件のほうは、歌姫(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)が魅力に乏しく、謎解きも普通ながら、クライマックスに大列車追跡&格闘場面を用意していたので退屈しのぎになった。

常に及第点のハーバート・ロスらしい無難な仕上がり。
19世紀末の風俗描写は手抜かりなく良好。美術も素晴らしい。

決して悪い出来ではないのだが、ワイルダーの茶目っ気たっぷりな「シャーロック・ホームズの冒険」と続けて見たので、いささか辛い見方をしてしまった。

60

2021/03/09

シャーロック・ホームズ

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SHERLOCK HOLMES
2009年(日本公開:2010年03月)
ガイ・リッチー ロバート・ダウニー・Jr ジュード・ロウ レイチェル・マクアダムス マーク・ストロング ケリー・ライリー エディ・マーサン ジェームズ・フォックス ハンス・マシソン ウィリアム・ホープ

「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」のガイ・リッチーによるホームズ・パスティーシュ。黒魔術による陰謀をホームズ&ワトソンが推理と格闘で解決する。

シャーロック・ホームズ

公開時は擦れっ枯らしのシャーロキアンに歓迎され、半可通のファンに嫌われた。
とてつもなく21世紀型のシャーロック・ホームズだが、原作のホームズ像をないがしろにしているわけではない。

頭脳明晰で化学実験が大好きで、ヴァイオリンを弾き、女性を嫌い、フェンシング・格闘技・武術・射撃に長けていて、変装が得意、ペシミスティックで、薬物中毒で、宗教迷信を嫌い、発言は辛辣で常識的な配慮に欠け、行動は素早く、ハドソン夫人が営むベイカー街221Bのアパートに友人の医者と共同で住んでいる。
そんな奴は古今東西ホームズ以外に存在しない。

そもそも鹿撃ち帽とインパネス(外套)のスタイルは挿絵に描かれていただけで、コナン・ドイルの文章にそのような服装の記述がないことは、むかしから知られている。

素人は外見で判断しないように。

シャーロック・ホームズ

観光名所になっているテムズ川の跳開式タワーブリッジが建造中で、映画の序盤に遠景で紹介される。ここをクライマックスの活劇にもってきたところはヒッチコック。造船所で船が水没するのはバスター・キートンの「船出」。不死身の大男は「私を愛したスパイ」のジョーズ(リチャード・キール)。19世紀末の倫敦風景を(CGを多用して)うまく丁寧に取り込み、ぐっと評価があがった。

シャーロック・ホームズ

ストーリーはホームズの行動を軸に描かれているので、「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」ほどプロットは入り組んでいない。偶然の積み重ねで諧謔群像劇を得意としてきたリッチーだけに、ファンとしては物足りなさもある。

陰謀の内容もダン・ブラウン(「天使と悪魔」)の二番煎じみたいで、流行に媚びている感じがした。

短いカットを目まぐるしく編集し、アクション場面を軽く演出するのが今風なのだろうが、おれは好きじゃない。相手の身体的特徴と動きを事前に推理して、効率よく先手攻撃するホームズは新鮮だった。

登場人物の扱いは、「シャーロック・ホームズ」というよりアニメの「ルパン三世」に近い。ホームズ(ロバート・ダウニー・Jr)がルパンで、ワトソン(ジュード・ロウ)が次元大介、敵か味方か単純に区別できない謎の美女「ボヘミアの醜聞」のアイリーン・アドラー(レイチェル・マクアダムス)は峰不二子。ちょっとした小芝居でホームズをサポートするレストレード警部(エディ・マーサン)は銭形警部。

シャーロック・ホームズ

宿敵モリアーティ教授の正体を隠したまま続編のつなぎにしているのが姑息。
その続編で峰不二子、もといアイリーンはあっさり殺されてしまった。

途中からロバート・ダウニーの表情が阿部寛に似ていることに気づき、気が削がれていけなかった。

70

2021/03/09

シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム

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SHERLOCK HOLMES: A GAME OF SHADOWS
2011年(日本公開:2012年03月)
ガイ・リッチー ロバート・ダウニー・Jr ジュード・ロウ ノオミ・ラパス ジャレッド・ハリス レイチェル・マクアダムス スティーヴン・フライ エディ・マーサン ケリー・ライリー ジェラルディン・ジェームズ ポール・アンダーソン

ガイ・リッチーのシャーロック・ホームズ第2弾。
今回は推理要素をバッサリと省き、アクションに徹底したストーリー。

前作でワケ有りな女性として登場したアイリーン・アドラー(レイチェル・マクアダムス)が、アバンタイトルであっさりと殺されてしまい、続編としてのつながりは希薄。

シャーロック・ホームズ

ホームズは19世紀末の倫敦から飛び出し欧州大陸を股にかけての大活躍。イギリス映画が生んだ、もうひとりの有名キャラクターにホームズの名を騙らせたような、そんな内容。

シャーロック・ホームズ

撮影スピードを変化しつつカットを細かく刻んで編集したアクション場面が売り物。
結末こそ「最後の事件」のラインバッハの滝で宿敵モリアーティ教授と転落するものの、そこに至る話の流れはホームズというよりジェームズ・ボンド。
行動を共にするジプシー女性(ノオミ・ラパス)の役柄もボンドガールと同じ扱い。

シャーロック・ホームズ

世界各地で爆弾事件を企て国際緊張から世界大戦を誘発、軍事産業で大儲けを狙う犯罪者とか、まるでスペクターのように安っぽい。

シャーロック・ホームズ

なんといってもモリアーティ(ジャレッド・ハリス)が軽い。ここはクリストファー・リー級の大物でないと迫力不足。
国境超えの場面でBGMにエンニオ・モリコーネの「真昼の死闘」を引用したり、製作姿勢も安っぽく品がない。

本作から10年を経ても3作目が出ないところから、シリーズはこれっきりで打ち切りになった模様。ガイ・リッチーとしては本作をステップにして007監督に名乗りをあげたかったのだろうが、イオン・プロはサム・メンデスを続けて起用(「スペクター」2015年)。リッチーはしっぺ返しみたいな感じでナポレオン・ソロ(「コードネーム U.N.C.L.E.」2015年)を監督。こちらもシリーズ化を目論んでいたのだろうが、それっきり放置状態。「キング・アーサー」(2017年)やら実写版「アラジン」(2019年)やら、ガイ・リッチーは他のことで忙しい。ホームズには興味を失くしてしまったのだろう。

おれも最近のガイ・リッチーに、ほとんど興味がない。

60

2021/03/14

オリエント急行殺人事件

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MURDER ON THE ORIENT EXPRESS
1974年(日本公開:1975年05月)
シドニー・ルメット アルバート・フィニー ジャクリーン・ビセット アンソニー・パーキンス マイケル・ヨーク ローレン・バコール イングリッド・バーグマン ショーン・コネリー リチャード・ウィドマーク ヴァネッサ・レッドグレーヴ ウェンディ・ヒラー ジョン・ギールグッド ジャン=ピエール・カッセル レイチェル・ロバーツ コリン・ブレイクリー デニス・クイリー ジョージ・クールリス マーティン・バルサム

イスタンブールの駅に続々とスターがやってくる場面に鳥肌がたつ。
それぞれの衣装がまた素晴らしい。千両役者の揃い踏み。

ゴージャス&グラマラス!

ポワロ役のアルバート・フィニーが見得切りまくりのオーバーアクト。だが、それがいい。ローレン・バコールはじめ、みなさん楽しんで芝居している。
アンソニー・パーキンスは「サイコ」のセルフパロディ演ってるし、自ら地味な役を希望して選んだイングリット・バーグマンの計算高さ。執事役のジョン・ギールグッドは余裕綽々。配役は百点満点。

オリエント急行殺人事件

超有名な原作(ゆえに結末=謎解きは誰もが知っている)だけに、ミステリーのテリングよりも、華麗で豪華なエンタテイメントに仕立てたところが大成功。
よくよく考えれば、敵(リチャード・ウィドマーク)の側近に2人も潜入しているのだから、いつでも殺せたところを12(+1)人揃って、しかもオリエント急行列車という格別な舞台に、ほとんど全員が身分を偽って一堂に会する。
劇場型犯罪というより演じるための犯罪劇。
まさに西洋花形歌舞伎。

オリエント急行殺人事件

シャンパングラスを交わすお洒落なカーテンコール。シドニー・ルメットは、きっちり役者の為所(しどころ)を押さえ、つくづく舞台の人だなあ、と。

貧乏くさいニューシネマ時代の末期に製作(1974年)された、贅沢を楽しむ映画。

劇伴音楽にシビアなルメットが、如何にもな映画音楽(リチャード・ロドニー・ベネット)を使ったのも珍しい。壮麗なメインタイトルはもちろん、イスタンブール駅発車場面のワルツが黄金時代のハリウッド流儀でいい。

オリエント急行殺人事件

70

2021/03/15

ナイル殺人事件

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DEATH ON THE NILE
1978年(日本公開:1978年12月)
ジョン・ギラーミン ピーター・ユスティノフ ベティ・デイヴィス マギー・スミス ミア・ファロー アンジェラ・ランズベリー ジョージ・ケネディ オリヴィア・ハッセー ジョン・フィンチ デヴィッド・ニーヴン ジャック・ウォーデン ロイス・チャイルズ サイモン・マッコーキンデール ジェーン・バーキン ハリー・アンドリュース

「オリエント急行殺人事件」の高評価&好成績で気を良くしたEMI社によるクリスティ原作ミステリー大作第2弾。今回もベティ・デイヴィスを筆頭に欧米のオールドスターをかき集め、異国趣味たっぷりなロケーションで贅沢三昧。

公開時は原作を読んでいなかったこともあり、ミア・ファローの熱演かつ意外な結末もあって、とてもおもしろく見た記憶が残っていた。
「タワーリング・インフェルノ」「キングコング」とスペクタクル大作を連発したジョン・ギラーミンが、特撮抜きで正統派の娯楽作品に手腕をみせたことも高く評価していたのだが……

ナイル殺人事件

「オリエント急行」と続けてみたら、テンポがのんびりしているぶん格が落ちる。殺人事件が起こるまでに全体の半分の尺を使ってるし、オールスターキャストも二番煎じな感じが否めない。「オリエント急行」の役者たちのほうがピリピリした緊張感があった。これは監督の違いか、編集の違いだと思う。

ピーター・ユスティノフのポアロがのんびりムードに加担しているのは間違いない。
ポルノ作家のアンジェラ・ランズベリーとベティ・デイヴィスの怪演が目立ちすぎて、名探偵が霞んでしまった。母親が殺されたばかりというのに、ニコニコ笑顔で婚約者と下船するオリビア・ハッセーも変だ。

逆にジョージ・ケネディとデヴィッド・ニーヴンのベテラン男優陣は気が抜けたサイダー(この比喩古すぎ、もっと現代的な例えはないものか)で、「オリエント急行」みたいに役者だけ見ていても楽しい! という気にならない。
そのかわり、雪崩で身動きできなくなった急行列車とは違い、エジプト観光はたっぷり楽しめる。

ナイル殺人事件

撮影監督はジャック・カーディフ。
ピラミッド頂上なんかどうやって撮ったんだろう。セットには見えなかったぞ。

ミア・ファローの代表作として、記憶に残る映画ではある。

ナイル殺人事件

65

2021/03/17

キング・コング

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KING KONG
1933年(日本公開:1933年09月)
メリアン・C・クーパー アーネスト・B・シュードサック フェイ・レイ ロバート・アームストロング ブルース・キャボット フランク・ライチャー サム・ハーディ ノーブル・ジョンソン ジェームズ・フラヴィン

スカル島に着いてからの恐竜オンパレード、怒涛の展開。
何度見ても面白い。怪獣映画の原点にして永遠の名作。

キング・コング

ウィリス・オブライエンのストップモーション・アニメ、芸が細かい。
ユーモラスな味付けが絶妙。

マックス・スタイナーの音楽が凄い。劇伴音楽の古典であり永遠の名作。

70

2021/03/18

キングコング対ゴジラ

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KING KONG VS GODZILLA
1962年(日本公開:1962年08月)
本多猪四郎 高島忠夫 浜美枝 佐原健二 藤木悠 有島一郎 若林映子 平田昭彦 田崎潤 大村千吉 小杉義男 沢村いき雄 根岸明美 松村達男 松本染升 堺左千夫

東宝創立30周年記念超大作。
総天然色(イーストマンカラー)シネマスコープ(東宝スコープ)。
1933年の「キング・コング」をみて特技監督を志したという円谷英二にとっては、夢のような仕事だったのではなかろうか。

戦時を思い起こさせる暗い作風の「ゴジラ」(1954年)から8年を経て、もはや戦後ではない昭和37年、高度経済成長期の日本を象徴する明るく陽気なストーリー。

テレビの聴取率アップのためスポンサー(パシフィック製薬)の宣伝部長(有島一郎)は、南海のファロ島に棲む巨大なる魔神を日本に輸送するようテレビ局に要請。

キングコング対ゴジラ

制作スタッフの高島忠夫と藤木悠が猟銃を携え(たった二人で)、おもしろ通訳の大村千吉をガイドにファロ島に赴き、コングの捕獲に成功する。

キングコング対ゴジラ

折しも北極海で氷漬けになっていたゴジラが覚醒し松島湾に上陸、首都目指して南下。
かくして日米怪獣対決の幕は切って落とされた。ガオー、ガオー!

脚本は関沢新一。以後、これが東宝怪獣プロレス・シリーズの雛形となった。
ヒロイン(浜美枝)は、電車に乗るたび怪獣に襲われる。
まったくもってバカバカしいストーリー。間抜けな登場人物とその演技。

音楽(伊福部昭)だけは永遠不滅。

キングコング対ゴジラ

60

2021/03/18

キングコングの逆襲

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KING KONG ESCAPES
1967年(日本公開:1967年07月)
本多猪四郎 ローズ・リーズン 宝田明 リンダ・ミラー 浜美枝 天本英世 沢村いき雄 堺左千夫 田島義文 草川直也 桐野洋雄 黒部進 伊吹徹 鈴木和夫 北竜二

東宝創立35周年記念映画。メインタイトルの前に「RKOと提携して製作した」とのタイトルが出る。パチもんじゃないぞ、ということか。
コングはオリジナルと同様に南海の孤島に棲んでいる。肉食恐竜(ゴロザウルス)と巨大ヘビと格闘するのもオリジナルを踏襲している。さらに、金髪女性(リンダ・ミラー)に一目惚れするのも一緒。「キングコング対ゴジラ」でやけにデカかった身長も20メートルに修正され、よりオリジナルに近い造形。

キングコングの逆襲

飛び蹴りを得意技にしているゴロザウルス、電波でコントロールされているメカニコングとの東京タワーでの格闘がみどころ。

頻繁にインサートされる人間たちの(間抜けな)リアクションが興ざめ。

スパイ映画ブームの1967年夏、「007は二度死ぬ」と同時期に公開され、本作の主役(ローズ・リーズン)はどことなくショーン・コネリーに似た容貌。そっくりさんオーディションで選ばれたのだろうか?

キングコングの逆襲

マダム・ピラニア(浜美枝)が、北極基地のラウンジで誘惑する場面なんかは、明らかにボンド映画風に撮っている。洋酒(ウイスキー?)をグラスに注ぐ場面が何度かあったが、とても安っぽく不味そうだった。
浜美枝はボンドガールをやったうえでの配役だったろうけどミス・キャスト。彼女の可愛いルックスは非情な女スパイに見えない。北極基地のセットも、「ドクター・ノオ」あたりの秘密基地を模倣して作られている。

キングコングの逆襲

天本英世が悪の天才科学者ドクター・フーで怪演。下の歯並びがガタガタで汚らしい。
モンド島に独り住んでいる長老を演じるのは沢村いき雄。手足バタバタさせてデタラメ現地語を喚いているが、「キングコング対ゴジラ」の大村千吉には敵わない。

フー博士の手下は、田島義文やら堺左千夫やら黒部進やら、いつもの東宝特撮オールスターズ。併映だった「劇場版ウルトラマン」(既放映のTVシリーズを何本か編集したもの)では、本作の悪役が改心してハヤタ隊員となり、ウルトラマンに化けて怪獣と戦う。怪獣大好きな子どもは、そんなところを面白がっていた。

ご都合主義なストーリーでも、テンポが早いから最後までダレなく見られる。
やっぱり伊福部昭の音楽が良い。コングとスーザンのBGMは(似たような楽曲は「緯度0大作戦」など他にもあるけど)いかにも伊福部らしい名曲。

60

2021/03/25

キングコング

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KING KONG
1976年(日本公開:1976年12月)
ジョン・ギラーミン ジェフ・ブリッジス ジェシカ・ラング チャールズ・グローディン ジャック・オハローラン ジョン・ランドルフ ルネ・オーベルジョノワ ジョン・ローン

ディノ・デ・ラウレンティスが巨額の製作費を投じたリメイク版。
オリジナルが密林冒険映画の流れで企画されたのに対し、1976年度版はその時代を反映し、野生動物保護キャンペーンみたいなストーリーになっている。

公開前はコンピュータ制御の実物大コングが宣伝され話題になったが、実際は(ニューヨークのショウ場面で)数秒程度しか出てこない。
ほとんどの場面が、リック・ベイカーによる着ぐるみ(ベイカー本人が実演)とミニチュア・セットで撮影されている。これが素晴らしい出来で、コングの喜怒哀楽を表情豊かに表現、否応なく感情移入させられる。

キングコング

精密なミニチュア・ワークを売り物としていた東宝が「空の大怪獣ラドン」や「モスラ」あたりをピークに、特撮予算をケチっているあいだに、ハリウッドの技術は凄まじい勢いで進歩していた。光学合成なんかも「キングコングの逆襲」と比べると雲泥の差。
俳優たちのリアクションが、合成された特撮ときれいにシンクロしているので違和感なくみられる。コングの掌に握られたヒロイン(ジェシカ・ラング)の動きは、計算され見事にマッチしている。コングが頬を膨らませ息を吹きかける滝の場面が出色。
濃霧の海に未開の島が現れる場面も素晴らしい。

キングコング

本作が映画デビューだったジェシカ・ラングは、素直で天真爛漫、ちょっと間抜けな可愛いブロンド美女、つまりコメディ映画のマリリン・モンローを演じている。公開当時はセクシーなだけのモデルあがりが素人芝居しているように思っていたが、これが「素」ではなく「演技」だったことを、その後の彼女のキャリアで知ることになる。

対して男優陣は、ジェフ・ブリッジスもチャールズ・グローディンも精彩を欠く。
曲者エド・ローター(ハリウッドの成田三樹夫?)も見どころないまま、丸太橋から墜落死。こんな誰が演じてもいいような端役、出なくてもいいのに。

キングコング

孤島でコングと格闘するのが大蛇だけというのが(怪獣好きには)寂しいが、特撮ロマンス映画として上出来。ジョン・バリーの音楽もいい。

東宝東和が輸入した日本公開版は134分。現在流通しているユニバーサル・ジャパン販売のDVD(STUDIO CANAL制作なので翻訳字幕がよろしくない)は、北米公開版の129分。カットされた(ジェシカの船室を窓から覗いていた乗組員が海に落とされる、などの)シーンは、特典映像に入っている。

いまとなっては複雑な気持ちにさせる、月明かりに浮かぶ世界貿易センタービル。

キングコング

70

2021/03/27

キング・コング

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KING KONG
2005年(日本公開:2005年12月)
ピーター・ジャクソン ナオミ・ワッツ エイドリアン・ブロディ ジャック・ブラック トーマス・クレッチマン コリン・ハンクス ジェイミー・ベル エヴァン・パーク

「ロード・オブ・ザ・リング」三部作の成功(第三部は2003年度アカデミー賞を11部門で受賞)でがっぽり儲けた金を湯水の如く注ぎ込んで、贅沢三昧やりたい放題に詰め込んだ、ピーター・ジャクソンによる2005年度リメイク版(製作費2億700万ドル!)。
クレジットの最後にオリジナル製作者たちへの献辞を出すまでもなく、真っ向からオリジナルを尊重し、ストーリーを踏襲している。
時代設定も1933年で役名も、タイトルデザインも同じ。アン・ダロウはりんごを万引する。ニューヨークの劇場でピットのオーケストラが、マックス・スタイナーのオリジナルスコアを演奏しているのが嬉しかった。

キング・コング

ファーストシーンでアル・ジョルスンの歌をBGMに大恐慌時代のニューヨークをたーっぷり見せたり、主演女優を探している映画監督のデナム(ジャック・ブラック)が、フェイ・レイやメリアン・C・クーパーの名を出したりするのは、まぁ良いとして、髑髏島に上陸するまでに55分を費やすのは如何なものか。
「キング・コング」のリメイクはこれで打ち止め、これが最終決定版、いま出来るものは全部出し尽くす、という意気込みは結構だが。観客よりも製作者のほうが楽しんでしまってる感じが強い。

登場人物はこれまでのコング映画のどれよりも、キャラが濃く説明されているものの、ドラマを盛り上げるのにまるで役に立っていない。ヒロインのナオミ・ワッツは綺麗(ジャングルを引っ張り回されても、服の汚れが目立たないくらいに綺麗)で良いのだけど、ジャック・ブラックは迫力不足(子どもたちと一緒にロックやってるのがお似合い)。カール・デナム役はオーソン・ウェルズ(ハリー・ライム)くらい灰汁が強く、愛嬌のある役者が欲しかった。恋人ドリスコル(曲がったデカ鼻が気になってしようがないエイドリアン・ブロディ)その他大勢は、オリジナル版でもラウレンティス版でもどうでもいい扱いなので、本作でもサラッとやってたら40分くらいは短縮できたように思う。
ポスターを落書きされたスター俳優(カイル・チャンドラー)がチラッとクラーク・ゲイブルの真似するところとか面白かったけど、本筋と関係ない遊びでしかないもの。
そうした本筋とは関係ないところに拘ってるぶん長くなり、ドラマが薄味になったように思う。 主役はコング。デナムやアンは狂言回しでしょ? 脚本の練(ねり)が足らなかったんだろうな。

キング・コング

もっと本質的なところを突っ込めば、ラストの「美女が野獣を殺した」はコングが片想いだからこそのセリフだ。コングとアンを相思相愛の関係で描くのであればぜんぜん意味がない。その点、本作とおなじ相思相愛で美女と野獣を描いたラウレンティス版のほうがちゃんとしている。

凶悪な人相の髑髏島住民たちは、コング出現後まったく姿を消してしまうし、年中霧に包まれていたのでこれまで発見されなかったはずの髑髏島なのに、コングが休息する岸壁から遠く水平線に沈む夕陽が拝めるし。銃器の扱いに不慣れな若者がパニクって撃っている自動小銃の弾丸は百発百中で巨大蟲にあたり、怪獣大暴れで大騒ぎのニューヨークも、通り一本抜けると人通りが途絶えしんと静まり返ってる。ほんといい加減だなあ。
船員たちの死を、中途半端に扱っているのも気に入らない。

最新技術を投入しての特撮スペクタクルは、これでもかっ! ってな具合に素晴らしく、モーションキャプチャーによるコング(アンディ・サーキス)が最高! 恐竜相手に見得を切り、不器用な愛情表現に男の哀愁を漂わせる。こいつは大河内傳次郎の丹下左膳だ。

キング・コング

髑髏島のセット、そこに巣食う古代恐竜、猛禽類、(うじゃらうじゃらと気色悪い)巨大昆虫類、盛りだくさんでお腹いっぱい。
特撮マニアならずとも必見の見世物映画だが、上映3時間では(「ロード・オブ・ザ・リング」と同様)2度3度と繰り返し見る気になれないのが最大の欠点(と言いつつ、今回は2度目だった)。更に長い201分のディレクターズ・カット版がDVDで販売されているそうだが、もう結構、お腹いっぱいです。

70

2021/03/30

キングコング:髑髏島の巨神

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KONG: SKULL ISLAND
2017年(日本公開:2017年03月)
ジョーダン・ヴォート=ロバーツ トム・ヒドルストン サミュエル・L・ジャクソン ジョン・グッドマン ブリー・ラーソン ジン・ティエン トビー・ケベル ジョン・オーティス コーリー・ホーキンズ ジェイソン・ミッチェル シェー・ウィガム トーマス・マン テリー・ノタリー ジョン・C・ライリー MIYAVI ユージン・コルデロ ウィル・ブリテン マーク・エヴァン・ジャクソン リチャード・ジェンキンス

クリストファー・ノーラン版「バットマン(ダークナイト)」三部作や「パシフック・リム」など、特撮映画を専門に製作しているレジェンダリー社のキングコング。
今回のコングはオリジナルから離れ、地下空洞世界に巣食う怪獣たちを、その出入口である髑髏島の洞窟から出ないよう監視している守護神という新設定(平成「ガメラ」と近似してる)。

キングコング:髑髏島の巨神

ストーリーは思いっきりB級に傾いた。
今度のは体長31.6メートルだそうで、東宝怪獣並みにでっかい。若い女性が好き、という性癖だけは受け継いでいる。最新のデジタル技術を駆使した特撮(ILM)が最大のポイント。
髑髏トカゲとのラストバトルは大迫力。
監督は宮崎駿のアニメ映画(「天空の城ラピュタ」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」)に傾倒しているそうで、それらを模倣(オマージュ)した場面が散見される。

キングコング:髑髏島の巨神

CGアクション映画はいささか食傷気味だけど、サミュエル・ジャクソンとジョン・グッドマンが出ていたので、いちおう見てみた。ドラマ部分の作りが、紋切り型なわりに雑で安っぽく、キャラが薄っぺらい。
ジョン・C・ライリー扮する第二次大戦の生き残りとか良い設定なのに、うまく活かされていない。戦闘に憑かれ誤った行動にはしる指揮官(サミュエル・ジャクソン)とか、故郷を想う若い兵士の死とか、「またかよ」ってうんざりしてしまう。

喜怒哀楽を表情に出さず、無言で意思疎通する原住民がユニークでおもしろかった。

キングコング:髑髏島の巨神

60

映画採点基準

80点 オールタイムベストテン候補(2本)
75点 年間ベストワン候補(18本)
70点 年間ベストテン候補(83本)
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60点 水準作(77本)
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