エルキュール・ポアロ(2本)
2021/03/14
オリエント急行殺人事件
MURDER ON THE ORIENT EXPRESS
1974年(日本公開:1975年05月)
シドニー・ルメット アルバート・フィニー ジャクリーン・ビセット アンソニー・パーキンス マイケル・ヨーク ローレン・バコール イングリッド・バーグマン ショーン・コネリー リチャード・ウィドマーク ヴァネッサ・レッドグレーヴ ウェンディ・ヒラー ジョン・ギールグッド ジャン=ピエール・カッセル レイチェル・ロバーツ コリン・ブレイクリー デニス・クイリー ジョージ・クールリス マーティン・バルサム
イスタンブールの駅に続々とスターがやってくる場面に鳥肌がたつ。
それぞれの衣装がまた素晴らしい。千両役者の揃い踏み。
ゴージャス&グラマラス!
ポワロ役のアルバート・フィニーが見得切りまくりのオーバーアクト。だが、それがいい。ローレン・バコールはじめ、みなさん楽しんで芝居している。
アンソニー・パーキンスは「サイコ」のセルフパロディ演ってるし、自ら地味な役を希望して選んだイングリット・バーグマンの計算高さ。執事役のジョン・ギールグッドは余裕綽々。配役は百点満点。
超有名な原作(ゆえに結末=謎解きは誰もが知っている)だけに、ミステリーのテリングよりも、華麗で豪華なエンタテイメントに仕立てたところが大成功。
よくよく考えれば、敵(リチャード・ウィドマーク)の側近に2人も潜入しているのだから、いつでも殺せたところを12(+1)人揃って、しかもオリエント急行列車という格別な舞台に、ほとんど全員が身分を偽って一堂に会する。
劇場型犯罪というより演じるための犯罪劇。
まさに西洋花形歌舞伎。
シャンパングラスを交わすお洒落なカーテンコール。シドニー・ルメットは、きっちり役者の為所(しどころ)を押さえ、つくづく舞台の人だなあ、と。
貧乏くさいニューシネマ時代の末期に製作(1974年)された、贅沢を楽しむ映画。
劇伴音楽にシビアなルメットが、如何にもな映画音楽(リチャード・ロドニー・ベネット)を使ったのも珍しい。壮麗なメインタイトルはもちろん、イスタンブール駅発車場面のワルツが黄金時代のハリウッド流儀でいい。
70点
#エルキュール・ポアロ
2021/03/15
ナイル殺人事件
DEATH ON THE NILE
1978年(日本公開:1978年12月)
ジョン・ギラーミン ピーター・ユスティノフ ベティ・デイヴィス マギー・スミス ミア・ファロー アンジェラ・ランズベリー ジョージ・ケネディ オリヴィア・ハッセー ジョン・フィンチ デヴィッド・ニーヴン ジャック・ウォーデン ロイス・チャイルズ サイモン・マッコーキンデール ジェーン・バーキン ハリー・アンドリュース
「オリエント急行殺人事件」の高評価&好成績で気を良くしたEMI社によるクリスティ原作ミステリー大作第2弾。今回もベティ・デイヴィスを筆頭に欧米のオールドスターをかき集め、異国趣味たっぷりなロケーションで贅沢三昧。
公開時は原作を読んでいなかったこともあり、ミア・ファローの熱演かつ意外な結末もあって、とてもおもしろく見た記憶が残っていた。
「タワーリング・インフェルノ」「キングコング」とスペクタクル大作を連発したジョン・ギラーミンが、特撮抜きで正統派の娯楽作品に手腕をみせたことも高く評価していたのだが……
「オリエント急行」と続けてみたら、テンポがのんびりしているぶん格が落ちる。殺人事件が起こるまでに全体の半分の尺を使ってるし、オールスターキャストも二番煎じな感じが否めない。「オリエント急行」の役者たちのほうがピリピリした緊張感があった。これは監督の違いか、編集の違いだと思う。
ピーター・ユスティノフのポアロがのんびりムードに加担しているのは間違いない。
ポルノ作家のアンジェラ・ランズベリーとベティ・デイヴィスの怪演が目立ちすぎて、名探偵が霞んでしまった。母親が殺されたばかりというのに、ニコニコ笑顔で婚約者と下船するオリビア・ハッセーも変だ。
逆にジョージ・ケネディとデヴィッド・ニーヴンのベテラン男優陣は気が抜けたサイダー(この比喩古すぎ、もっと現代的な例えはないものか)で、「オリエント急行」みたいに役者だけ見ていても楽しい! という気にならない。
そのかわり、雪崩で身動きできなくなった急行列車とは違い、エジプト観光はたっぷり楽しめる。
撮影監督はジャック・カーディフ。
ピラミッド頂上なんかどうやって撮ったんだろう。セットには見えなかったぞ。
ミア・ファローの代表作として、記憶に残る映画ではある。
65点
#エルキュール・ポアロ