2021年09月|映画スクラップブック


2021年 09月(7本)

2021/09/06

キートンのカメラマン

キートンのカメラマン|soe006 映画スクラップブック
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THE CAMERAMAN
1928年(日本未公開)
エドワード・セジウィック バスター・キートン マーセリン・デイ ハリー・グリボン ハロルド・グッドウィン シドニー・ブラッキー 猿のジョセフィン

MGMに身売りしたバスター・キートンは、プロデューサー主導の大企業システムのなか、アドリブのギャグを禁止され監督権を剥奪され個性を封印させられた挙げ句、酒に身をやつして消えていった。
同時にトーキー映画が隆盛し、サイレント喜劇から観客の足は遠退いていった。本作でのカメラはあきらかにトーキー映画のそれであり、サイレントらしからぬフレームの枠にこれまでバスター・キートン映画で見られたアクションのテンポとダイナミックスは薄められ、ぐっと普通に寄せられている。

それでも移籍後第1作の「カメラマン」は、見どころの多いキートン喜劇の傑作だ。

街頭でインスタント写真を撮っていたキートンは、パレードの最中に受付嬢マーセリン・デイに一目惚れ。彼女が勤務するMGMニュース映画社に売り込むため、おんぼろ撮影機を購入して孤軍奮闘。とくダネを求めて火事現場(サイレン鳴らして走っていた消防車は署に回送していたというオチ)や野球場(ヤンキースの試合はアウェイで球場は無人だったというオチ)へ。撮ってきたフィルムは、二重露光でニューヨーク・アベニューに戦艦が重なったもの(これはこれでシュールレアリスムな凄い映像)で、映写室で笑い者になる。見かねたマーセリン嬢は、中華街のスクープ情報をこっそり彼に教える。

キートンのカメラマン

賑やかなお祭りの最中に中華ギャング同士の銃撃戦が始まり、キートンは必死でカメラのクランクを回す。ここが最大の見せ場。ジャッキー・チェンも絶対参考にしている大活劇。セーラー服が可愛い小猿のジョセフィンに食われている気もしないではないが。絶体絶命のピンチは警官隊の突入で救われる。ここがMGMらしいストーリー展開で、キーストン・コップスとは真逆な警官の登場に普通すぎないかとガッカリ。
事務所ドアのガラスを割る繰り返しのギャグもパターンどおりで、ぜんぜんキートンらしくない。

小猿の悪戯でフィルムがすり替えられ、キートンは失意のどん底に落とされたものの、小猿がクランクを回して水難事故の一部始終を撮影していたことで、ハッピーエンドな大団円を迎える。普通のラブコメとしては上出来の部類。

ヤンキース・スタジアムの一人野球は、サイレント時代の終焉をみているようで感傷的な気分になる。

65

2021/09/06

キートンの警官騒動

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COPS
1922年(日本公開:1973年06月)
バスター・キートン ヴァージニア・フォックス ジョー・ロバーツ

バスター・キートンの短編では本作を最高傑作と絶賛するキートン・ファンは多い。
警官隊のパレードで爆弾事件が発生、テロリストと間違われたキートンが逃げて、逃げて、逃げまくる。追いかけるは数百人の警官隊。キーストン・コップスの拡大豪華版。
バスター・キートンの真骨頂。これが喜劇だ、これが映画だ!

キートンの警官騒動

古着の背広に掛けられた値札を取り違えるギャグも面白い。

70

2021/09/06

キートンのハイサイン

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THE HIGH SIGN
1921年(日本未公開)
バスター・キートン エディ・クライン バーティン・バーケット チャールズ・ドロシー アル・セント・ジョン

ロスコー・アーバックルの紹介で映画界入りしたキートンの監督第1作。
悪党一味が企てた暗殺騒動に巻き込まれるキートンのドタバタ劇。
デブ君喜劇の常連アル・セント・ジョンが友情出演している。

とてつもなく早い回転のメリーゴーラウンド(ヒッチコックかよ!)で新聞紙を掠め取り、それをベンチで読もうとすると、裁断されていない一枚の紙に広がるという他愛のないギャグからスタート。お喋りに夢中な警官の拳銃をバナナとすり替えて、空き瓶で射撃練習(この場面にセント・ジョンが登場)。
町の射的場で仕事にありつき、店番を頼まれ、紐で犬をコントロールする仕掛けのギャグ。ペンキで描いたフックが実際に帽子掛になっちゃうキートンらしい小ネタも入る。

射撃場の地下室は、実は悪党一味「禿鷲団」のアジト。キートンもメンバーに加入させられる。彼らが交わす同士であることを証明するサインが子供じみて実に面白い。見た人は誰もが一度は真似するはず。

キートンのハイサイン

その後(インチキな)射撃の腕を買われたキートンは、裕福な男のボディガードに雇われる。悪党一味が暗殺を企てているのがこの金持ち紳士で、キートンは敵と味方の双方に席を置くジレンマ。黒澤明「用心棒」の原型パターン。
いったんは偽装工作で誤魔化したものの、すぐにバレて追いかけっこのドタバタとなる。落とし穴や隠し扉の仕掛けと、上下左右4コマの室内移動がスピーディに展開。

キートンのハイサイン

しかしキートン本人は映画の出来に満足がいかなかったらしく、本作が劇場公開されたのは次の「文化生活一週間」(1922)のあと。常軌を逸したシュールな「文化生活一週間」に比べたら若干おとなしい内容ではあるものの、決して見劣りするものではない。
MGMに移籍するまでのキートン映画はどれもが名作。何度見ても面白い!

65

2021/09/14

マーズ・アタック!

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MARS ATTACKS!
1996年(日本公開:1997年03月)
ティム・バートン ジャック・ニコルソン グレン・クローズ アネット・ベニング ピアース・ブロスナン ダニー・デヴィート マーティン・ショート サラ・ジェシカ・パーカー マイケル・J・フォックス ロッド・スタイガー トム・ジョーンズ ルーカス・ハース ナタリー・ポートマン ジム・ブラウン リサ・マリー シルヴィア・シドニー ジョー・ドン・ベイカー パム・グリア ポール・ウィンフィールド イエジー・スコリモフスキ バーベット・シュローダー クリスティナ・アップルゲイト ジャック・ブラック

燃える牛のスタンピードから、円盤がわんさか地球に襲来してくるオープニングが素晴らしい。ダニー・エルフマンの音楽も絶好調。オールスター・キャストの超大作。B級であることを意識し過ぎて滑っているところも多いが、それもご愛嬌。A級を狙うと「猿の惑星」のように失敗してしまう。どこか抜けた可笑しみがあってこそのティム・バートン。

マーズ・アタック!

ジャック・ニコルソンの二役(特にラスベガスの手配師)にどんな意味があるのか分からないけど、最後まで涙ながらに友好和平を訴える大統領(ニコルソン)が哀れ。スター俳優の無駄使い。

マーズ・アタック!

ジョー・ドン・ベイカー、ジム・ブラウン、ポール・ウィンフィールドなど、2本立て3本立ての二番館でおなじみだった役者が多くキャスティングされているのが嬉しい。
パム・グリアは「ジャッキー・ブラウン」前年の出演。やたら好戦的なロッド・スタイガー将軍。(簡単に殺されちゃうけど)マイケル・J・フォックス健在。右往左往するだけで何のために出ているのか分からないダニー・デヴィート。ラストで歌うためだけに出ているトム・ジョーンズ。

マーズ・アタック!

オールドムービー・ファンとして特筆しておきたいのが、笑顔がチャーミングなおばあちゃん。「暗黒街の弾痕」のシルヴィア・シドニー。本作が遺作となった。

円盤や火星人は最新CGで作ってるのに、動きはレイ・ハリーハウゼンのアニメーション調。ワシントン記念塔を左右に傾けて見学者たちをいたぶるのは「空飛ぶ円盤地球を襲撃す」。火星人の弱点が特定の周波数を含む音波なのは「怪獣大戦争」。登場するゴジラは「ゴジラVSビオランテ」のゴジラ。ひとつひとつ書いてたらキリがない。
いろんな映画記憶が詰め込まれたガラクタ箱。

大金使い放題で思いっきり安っぽい映画を作ったティム・バートンに栄光あれ!

マーズ・アタック!

70

2021/09/15

リトルショップ・オブ・ホラーズ

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LITTLE SHOP OF HORRORS
1986年(日本公開:1987年04月)
フランク・オズ リック・モラニス エレン・グリーン スティーヴ・マーティン ヴィンセント・ガーディニア ジェームズ・ベルーシ ジョン・キャンディ クリストファー・ゲスト ビル・マーレイ ティシャ・キャンベル

個人的にミュージカル映画ベストテンの1本。

気が滅入っているときの特効薬。娯楽映画はかくあるべし。

リトルショップ・オブ・ホラーズ

ギリシャ劇の合唱隊みたいに進行役として各場面に登場する黒人三人娘が最高。
凄いおっぱいと凄い歌唱のエレン・グリーンが最高。
リック・モラリスの情けない笑顔が最高。
アクが強くて好きになれないスティーヴ・マーチンも本作の歯医者は適役の怪演。
侵略宇宙生物グリーンなワルの造形と操演が凄い、声も凄い。

1950年代アメリカの美術がよろしく、再現したパインウッド・スタジオの贅沢なセットが素晴らしい。この世界を構築したフランク・オズのセンスが素晴らしい。
すべてはハワード・アシュマン&アラン・メンケンの歌曲があってのもの。
「リトル・マーメイド」や「美女と野獣」よりも断然こっち。プロローグからエンディングまで全部のナンバーが素晴らしい。

リトルショップ・オブ・ホラーズ

DVDに収録された監督の音声解説やメイキングも最高に素晴らしい。やっぱり映画は手工芸品(マニュファクチュア)だ。コンピュータ(オートメーション)ではこうは作れない。追加撮影となった黒人三人娘のラストショット裏話とか、嬉しくなってしまう。

70

2021/09/21

死霊伝説

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SALEM'S LOT
1979年(日本公開:1982年01月)
トビー・フーパー デヴィッド・ソウル ジェームズ・メイソン レジー・ナルダー ランス・カーウィン ボニー・ベデリア リュー・エアーズ バーバラ・バブコック マリー・ウィンザー ジョージ・ズンザ エリシャ・クック・Jr エド・フランダース

スティーヴン・キングの小説は面白い。あらすじだけ抜いたら陳腐極まりない法螺話だが、微に入り細を穿つ執拗な描写がページを捲らせグイグイ読ませる。読みだしたら止まらない。どれも上下2巻とか分厚い小説なので徹夜を覚悟しなきゃいけない。

本作はキングの長編2作目「呪われた町」を「悪魔のいけにえ」のトビー・フーパーが映画化。製作は「ポセイドン・アドベンチャー」や「タワーリング・インフェルノ」の脚本家スターリング・シリファント、脚本は「明日に向って撃て!」や「フロント・ページ」を製作したポール・モナシュ。
本格的な映画を期待したのだが、なんとも安っぽく雑な仕上がりにがっかり。しかし劇場公開版はテレビのミニシリーズを再編集した短縮版だったとのことで、DVDはノーカット版(3時間)を販売。こっちは評判がよろしいので、暇つぶしに見てみた。

死霊となった子供が窓の向こうにふわふわ浮かんでる場面が不気味でいい。吸血鬼は招待しないと勝手に入ってこられない。吸血鬼もののセオリーを遵守したオーソドックスなストーリー。
主演は「ダーティハリー2」の白バイ警官デヴィッド・ソウル。ヒロインは後に「ダイ・ハード」でマクレーン刑事の妻役をやったボニー・ベデリア。吸血鬼の世話役を演じるジェームズ・メイスンがベテランらしい風格をみせる。元がテレビ番組用なので、CM前後や次回に続くのタイミングで不自然に盛り上がる。

60

2021/09/22

ディープ・ブルー

ディープ・ブルー|soe006 映画スクラップブック
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DEEP BLUE SEA
1999年(日本公開:1999年10月)
レニー・ハーリン トーマス・ジェーン サフロン・バロウズ サミュエル・L・ジャクソン LL・クール・J ジャクリーン・マッケンジー マイケル・ラパポート ステラン・スカルスガルド アイダ・タートゥーロ ダニエル・レイ ブレント・ローム

低予算B級ホラーの「エルム街の悪夢4/ザ・ドリームマスター最後の反撃」で活きの良い演出を買われ「ダイ・ハード2」に大抜擢されたところまでは良かったのだが、その後は大味な大作ばかりで興味が失せたレニー・ハーリンのサメ・パニック映画。
駄作揃いのサメ映画(というジャンルがあるらしい)のなかでは評判がよろしいようなので、(レニー・ハーリンだから)ダメ元で暇つぶしに見てみた。

ディープ・ブルー

サメの脳を使って新薬を開発している海洋研究所でトラブルが発生、凶暴な殺戮マシーンと化したサメが大暴れ、タイフーンで孤立した研究所の職員を食いちぎりまくる。

「JAWSジョーズ」と「エイリアン」と「ポセイドン・アドベンチャー」を足して、そこから「JAWSジョーズ」のサスペンスと「エイリアン」のミステリーと「ポセイドン・アドベンチャー」のヒューマニズムを抜いた、レニー・ハーリンらしい軽くて薄味なポテトチップス。登場人物に魅力がないのが最大の欠点。

製作費72億円で200億円(世界興行収入)の売り上げだそうです。凄いね。

60

映画採点基準

80点 オールタイムベストテン候補(2本)
75点 年間ベストワン候補(18本)
70点 年間ベストテン候補(83本)
65点 上出来・個人的嗜好(78本)
60点 水準作(77本)
55点以下 このサイトでは扱いません

個人の備忘録としての感想メモ&採点
オススメ度ではありません