ハロー!キートン|映画スクラップブック


ハロー!キートン(5本)

2021/09/06

キートンのハイサイン

キートンのハイサイン|soe006 映画スクラップブック
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THE HIGH SIGN
1921年(日本未公開)
バスター・キートン エディ・クライン バーティン・バーケット チャールズ・ドロシー アル・セント・ジョン

ロスコー・アーバックルの紹介で映画界入りしたキートンの監督第1作。
悪党一味が企てた暗殺騒動に巻き込まれるキートンのドタバタ劇。
デブ君喜劇の常連アル・セント・ジョンが友情出演している。

とてつもなく早い回転のメリーゴーラウンド(ヒッチコックかよ!)で新聞紙を掠め取り、それをベンチで読もうとすると、裁断されていない一枚の紙に広がるという他愛のないギャグからスタート。お喋りに夢中な警官の拳銃をバナナとすり替えて、空き瓶で射撃練習(この場面にセント・ジョンが登場)。
町の射的場で仕事にありつき、店番を頼まれ、紐で犬をコントロールする仕掛けのギャグ。ペンキで描いたフックが実際に帽子掛になっちゃうキートンらしい小ネタも入る。

射撃場の地下室は、実は悪党一味「禿鷲団」のアジト。キートンもメンバーに加入させられる。彼らが交わす同士であることを証明するサインが子供じみて実に面白い。見た人は誰もが一度は真似するはず。

キートンのハイサイン

その後(インチキな)射撃の腕を買われたキートンは、裕福な男のボディガードに雇われる。悪党一味が暗殺を企てているのがこの金持ち紳士で、キートンは敵と味方の双方に席を置くジレンマ。黒澤明「用心棒」の原型パターン。
いったんは偽装工作で誤魔化したものの、すぐにバレて追いかけっこのドタバタとなる。落とし穴や隠し扉の仕掛けと、上下左右4コマの室内移動がスピーディに展開。

キートンのハイサイン

しかしキートン本人は映画の出来に満足がいかなかったらしく、本作が劇場公開されたのは次の「文化生活一週間」(1922)のあと。常軌を逸したシュールな「文化生活一週間」に比べたら若干おとなしい内容ではあるものの、決して見劣りするものではない。
MGMに移籍するまでのキートン映画はどれもが名作。何度見ても面白い!

65

2021/09/06

キートンの警官騒動

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COPS
1922年(日本公開:1973年06月)
バスター・キートン ヴァージニア・フォックス ジョー・ロバーツ

バスター・キートンの短編では本作を最高傑作と絶賛するキートン・ファンは多い。
警官隊のパレードで爆弾事件が発生、テロリストと間違われたキートンが逃げて、逃げて、逃げまくる。追いかけるは数百人の警官隊。キーストン・コップスの拡大豪華版。
バスター・キートンの真骨頂。これが喜劇だ、これが映画だ!

キートンの警官騒動

古着の背広に掛けられた値札を取り違えるギャグも面白い。

70

2020/05/12

海底王キートン

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THE NAVIGATOR
1922年(日本公開:1924年10月)
バスター・キートン キャサリン・マクガイア フレデリック・ブルーム ノーブル・ジョンソン

廃棄処分になる客船を25000ドルで買い取って製作した、バスター・キートンの長編第4作。
世間知らずの富豪の息子(キートン)が国際ギャングの陰謀に巻き込まれ、大邸宅の向かいに住んでいたこれまた世間知らずの海運会社の令嬢(キャサリン・マクガイア)と、(どうみても客船にしか見えない)巡洋艦で大海原を漂流。付近を航行中の船に助けを求めて旗を掲げるが、それが伝染病発生を知らせる旗だったため逃げられ、ついに人喰い土人の島(時代とはいえ人喰いとはエグイな)に漂着。座礁した船をなんとかしようと、潜水服を装着し、海底でカジキやらタコやらと大格闘のキートン。その間に令嬢は人喰いどもに拉致されて、縛られ焼かれ食われそうな絶体絶命の危機を、偶然突然現れた潜水艦に救助されてハッピーエンド。

家事全般を使用人任せだった若い二人だけに、食事するにも大変なトンチンカンぶりを見せて笑わせる。その後、キッチン用具を紐で吊り下げて便利に扱ってる場面は、短編時代にやってたアイディアの再現(作品名は忘れた)。
海底シーンは撮影用のプールではなく、シエラネヴァダ山中にあるタホ湖で、実際に潜って撮影された。防水ボックスにカメラを収め、潜水服のキャメラマンが4週間かけて撮ったそうな。まだ酸素ボンベが開発されていなかった時代のはなし。スゴイなあ。

65

2020/05/12

キートンの大列車追跡

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THE GENERAL
1926年(日本公開:1927年02月)
バスター・キートン マリアン・マック グレン・キャベンダー ジム・ファーレイ

南北戦争の最中、北軍のスパイに蒸気機関車「将軍号」と恋人(マリアン・マック)を盗まれた機関士(キートン)が、獅子奮迅の活躍で追跡し奪回し逃走する、巻き込まれ型冒険大活劇。
鉄道マニアが泣いて喜ぶハラハラドキドキの機関車チェイスがたっぷり。南軍北軍の兵隊エキストラもたっぷり。クライマックスは橋が燃やされ機関車もろとも崩落するスペクタクル・ショウ。
バスター・キートンの代表作とされている製作費42万ドルの超大作で、それにはまったく異論はないのだけど。

給水塔で水を被るギャグや、線路に荷物を落として追跡を阻止する妨害工作など、繰り返しあるのが退屈に感じられた。
後年「続・夕陽のガンマン/地獄の決闘」の参考になったであろう河川を挟んでの戦闘など、大掛かりなアクション場面ではあるものの、普通の戦争映画と変わりなく、全体、キートンらしいギャグが少ない。バカバカしいくらい大人数のエキストラを使っていて、それが「警官騒動」(1920年)のようなバカバカしいギャグになっていないのが残念。

バスター・キートンは長編より2巻もの(20分前後)の短編のほうが、アイディアが奇抜でスピードがあって、おれは好きだな。

65

2021/09/06

キートンのカメラマン

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THE CAMERAMAN
1928年(日本未公開)
エドワード・セジウィック バスター・キートン マーセリン・デイ ハリー・グリボン ハロルド・グッドウィン シドニー・ブラッキー 猿のジョセフィン

MGMに身売りしたバスター・キートンは、プロデューサー主導の大企業システムのなか、アドリブのギャグを禁止され監督権を剥奪され個性を封印させられた挙げ句、酒に身をやつして消えていった。
同時にトーキー映画が隆盛し、サイレント喜劇から観客の足は遠退いていった。本作でのカメラはあきらかにトーキー映画のそれであり、サイレントらしからぬフレームの枠にこれまでバスター・キートン映画で見られたアクションのテンポとダイナミックスは薄められ、ぐっと普通に寄せられている。

それでも移籍後第1作の「カメラマン」は、見どころの多いキートン喜劇の傑作だ。

街頭でインスタント写真を撮っていたキートンは、パレードの最中に受付嬢マーセリン・デイに一目惚れ。彼女が勤務するMGMニュース映画社に売り込むため、おんぼろ撮影機を購入して孤軍奮闘。とくダネを求めて火事現場(サイレン鳴らして走っていた消防車は署に回送していたというオチ)や野球場(ヤンキースの試合はアウェイで球場は無人だったというオチ)へ。撮ってきたフィルムは、二重露光でニューヨーク・アベニューに戦艦が重なったもの(これはこれでシュールレアリスムな凄い映像)で、映写室で笑い者になる。見かねたマーセリン嬢は、中華街のスクープ情報をこっそり彼に教える。

キートンのカメラマン

賑やかなお祭りの最中に中華ギャング同士の銃撃戦が始まり、キートンは必死でカメラのクランクを回す。ここが最大の見せ場。ジャッキー・チェンも絶対参考にしている大活劇。セーラー服が可愛い小猿のジョセフィンに食われている気もしないではないが。絶体絶命のピンチは警官隊の突入で救われる。ここがMGMらしいストーリー展開で、キーストン・コップスとは真逆な警官の登場に普通すぎないかとガッカリ。
事務所ドアのガラスを割る繰り返しのギャグもパターンどおりで、ぜんぜんキートンらしくない。

小猿の悪戯でフィルムがすり替えられ、キートンは失意のどん底に落とされたものの、小猿がクランクを回して水難事故の一部始終を撮影していたことで、ハッピーエンドな大団円を迎える。普通のラブコメとしては上出来の部類。

ヤンキース・スタジアムの一人野球は、サイレント時代の終焉をみているようで感傷的な気分になる。

65

映画採点基準

80点 オールタイムベストテン候補(2本)
75点 年間ベストワン候補(18本)
70点 年間ベストテン候補(83本)
65点 上出来・個人的嗜好(78本)
60点 水準作(77本)
55点以下 このサイトでは扱いません

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